HAPPY BIRTHDAY POLAND!! Category:APH Date:2009年07月22日 今日はポーランドの誕生日ですね…。リトアニアの時はろくなお祝い方ができなかったので、今回は文字書きらしく文でも書きます。とりあえず続きに立波っぽい小説突っ込んでおきます。HAPPY BIRTHDAY For Julyに投稿させていただいたやつです。内容的に今突っ込んどかないとっていう時事的なものがあるので。ネタばれですが、日食見に行く話です。去年から書きたかったので、ネタ的にかぶる方たくさんいると思いますが、日食と誕生日は当分かぶらないだろうからとりあえず書いてみたカンジです。あと、大した内容でもないしオチもないのに無駄に長いです。そしてやっぱり恥ずかしいです。すみません…。 oath少し前から空気が変わったのがわかる。冷や汗のような暑いのか寒いのかわからない感覚。窓の外は相変わらずの激しい雨で何も見えん。リトが「旅行に連れて行ってあげるよ」って言うから何も考えずに浮かれてここまで来たのはいいけど…この旅行の目的も詳しい行き先もオレは知らされていない。もっとも、リトが何の考えもなしにこんな事するわけないからその辺の心配はしとらんけど。そんな事を考えながらこの窮屈な座席に座らされている不満に小さくため息をついて、これから先何が起るのかだけを期待してオレは目を閉じた。オレの家から飛行機を乗り継いで着いた先は東アジアの島国。ただリトについて来ただけのオレは、出迎えてくれた日本にどんな態度をとればいいのか戸惑う。「こんにちは、お久しぶりですね。リトアニアさん、ポーランドさん」「あ、お久しぶりです、日本さん。今回は無理言ってすみませんでした。」オレが何も言わないことはわかっているので、リトが日本に応対する。「いえいえ、あのような事情があれば当然のことです。ここまでも長旅だったと思いますが、もう少し我慢してくださいね。」日本はいつも会議で見せるような落ち着いた表情を見せた。「いえ、そんな…長旅は覚悟の上ですから。ね、ポーランド」リトが突然オレに話をふってくる。どこに行くのかも知らされていないのにそんな覚悟できてるわけがない。「なぁ、今からどこ行くん?」「それは…もうすぐわかりますよ」オレの質問を日本謎めいた笑顔でかわす。でもそれはのけものにされているというより、まだ知らない方がいいというニュアンスを含んでいる感じがして、オレはそれ以上何もきけなかった。リトと日本の間ではもう色々決まっているみたいで、オレは完全にゲスト扱いだった。空港から車に乗せられて着いた先は大きな港。この様子だと船に乗ってどこかへ行くのかもしれない。その予感は的中して、オレたちは大雨の中、荷物と一緒に大きな船に乗り込んだ。天候は悪いけれど、波は比較的穏やかなので運航には問題ないのだと日本は言っていた。その小さな島に着くまでには一日半を要した。空港から船に乗って一日。その船が着いた港から小さな船に乗り換えて更に半日経ってようやく目的地に着いたらしい。雨は小さな船に乗り換える頃には止んでいたけれど、海以外何も見えないし、日差しが強すぎてとても暑かった。おまけに食べるものもあまりなくて、オレはずっと船内でバテていた。「ポーランドさん、大丈夫ですか?」「大丈夫だけど…この暑さどうにかならんの?」横になってだらけているオレに日本は涼しそうな顔で話しかけてくる。日本は汗一つかかずに苦笑いしている。これって暑いって言わんのかな。「ポー、そろそろ着くって。降りる準備しなきゃ。」リトはおもむろにそう言って、飲み物とかオレが散らかしたものを片付け始める。日本の手配のおかげで、オレたちは他の人よりも早く船から降りてホテルへ向かうことができた。ホテルといっても、そんなに豪華なものじゃなかったけれど、この島では一番いいホテルだってリトが言っとった。何かイベントでもあるのか、島は人で溢れていて、オレたちみたいな外国人も何人か見かけた。部屋に荷物を置いて休んでいると、部屋にやってきた日本に「夕食の時間までゆっくりしてください」と言われたので、オレは一人で近くを散歩する事にした。この島でアスファルトの道は主要道路一本だけみたいで、その他は足場の悪い農道のような道ばかりが目についた。畑の奥には森が広がっている。海もとてもきれいだったのに、なぜかオレはそんな森ばかりが気になって、自然とそこへ足が向いた。ここにはテレビや温室でしか見ないような大型の植物しかない。空気も建物も全てオレが今まで抱いていた「日本」とは違う感じがする。たぶんその印象は間違ってなくて、鳥のさえずりや木漏れ日の目に鮮やかな光景、雨上がり独特の匂いで満たされている空気さえもどこか甘くて初めて味わうものだった。昨日までずっと雨しか見ていなかったから、晴れた事が嬉しくて調子に乗って鼻歌を歌いながら歩いていると、いくつかの視線に気づいた。振り返ると日本と同じ黒い髪と黒い瞳の子供がいて、不思議そうな目でオレを見ている。子供相手に人見知りを発動していても仕方がないので笑いかけてやると、突然叫びだしてオレの回りをぐるぐる回り始めた。結局オレはその子供たちの相手をしながら島を一通りまわった。小さな島なので2時間もかからなかった。言葉は通じてないみたいやったけど、ある程度のコミュニケーションはとれた。わかるのはお互いの名前くらいで、込み入った話はもちろんできなかったけれど、サッカーボールを蹴り合ったりして戯れていた。そんな感じで遊びながら島をまわって、陽が落ちる頃に宿泊先のホテルの前でその子供たちと別れた。「ただいまだしー」「ポーランド遅かったね、どこ行ってたの?日本さんがもう夕食の準備できてるって言ってたよ。」心配してた、とは言わなかったけれど、リトの表情はあからさまにほっとしている感じがした。そんなに心配ならケータイに連絡くれればええのに、と思ったけど、リトがあえて口にしない内容の返事なんかできんから「散歩しとったんよ」とだけ言った。結構汗をかいていたので、オレは軽くシャワーを浴びてから夕食をとった。夕食はまぁあたり前かもしれんけど和食だった。リトは昔から使っていたみたいにうまくお箸を使いこなしていたけれど、オレは慣れてるわけじゃないから小さいものとかよくつかめなくて、かなり苦労しながら食べた。…今日はなんか疲れた。慣れない環境にいるせいもあるけど、一番の謎はどうしてリトがオレをこの島に連れてきたのかだ。こんなに時間をかけてわざわざ来たんやから何か理由があるはずなのに、リトも日本もその話を一向にしない。「リト」考えるよりも先にそんな言葉が自然と口をついた。さっきからオレが黙っているのに気付いていたリトは、待ち構えていたかのようにすぐに「何?」と返す。「この島で何があるん?わざわざ来たんやから特別な事でもあるんやろ?」「ああ、まだ言ってなかったっけ。明日ね、日食があるんだよ」リトはあっさりとオレの疑問を解消させた。サプライズとかの類ではなかったことに少し気抜けする。「日食?ああ…あの、太陽が欠けるやつやろ?」「そうだよ。皆既日食はこの島と、近くの限られた地域でしか今年は見られないんだって。」ああ、だからこの小さな島に見合わないくらいたくさんの人が訪れているのか。もちろんオレもその中の一人だけれど。ここまできけば、さすがのオレでもどうしてリトがあえて時間をかけてまでこの島に来たのかはわかる。だって明日はオレの誕生日だし。「明日のいつ日食が起きるん?」「詳しい時間は覚えてないけど…九時半くらいから始まってお昼ちょっと過ぎに終るって日本さんが言ってたよ」それをきいて、明日の朝はあまりゆっくりできなのかと少しがっかりしたけど、これだけ人がいるんやから仕方ないかと思いなおした。「…じゃあそろそろ眠った方がよくね?」「そうだね。もうすぐ日付も変わるし、寝坊して日本さんに迷惑かけたら悪いから…そろそろ寝ようか。」そう言ってリトは荷物整理をしていた手を止めて、明日着る服の準備をすませて床についた。先に寝転がっていたオレは、リトが電気を消して寝息をたて始めても、今日の出来事を思い返したりしていて中々寝付けなかった。明日が楽しみという気持ちはもちろんあったけれど、割合でいえば不安の方が大きかった。日食の起こる頻度は理屈で言えばそんなに少なくない。割と年中起きている現象だ。それ自体は何の問題もないし、オレがどうこうしたいわけじゃない。ただ、昔から言われているように、この手の現象はいいイメージを持たれない。理屈がわかっているから信じたくもないけれど、実際のところ、オレが日食を見た年はろくな目に遭ったことがない。不運とかそんな言葉で片付けられないくらい情勢が悪くなったり、災害が起きたりする。そんな事と日食は関係ないと思うけれど、これまでの経験が不安をかき立てる。リトが日食をどう思っているのかはわからない。でも良かれと思ってわざわざここまでオレを連れてきてくれたんだし、そういう気持ちは純粋に嬉しい。こんな事で不安になっとるなんてリトにばれたらきっと笑われる。太陽が欠けるっていっても月が割り込むだけだし…そんなんどうって事ない。悪い事なんて何も起こるわけない。そう、頭ではわかっている。こんなん何でもないし。そう自分に言い聞かせて、この島での滞在がいい思い出になればいいなとオレは祈った。翌日は昨日ほど暑くはなかったけれど快晴で、日差しは十分強かった。朝食を済ませるとすぐに日本がオレたちを迎えに来て、観測に向いている場所まで連れて行ってくれた。そこはもう人で溢れかえっていたけれど、太陽は空にあるから特に問題はない。オレたちは人だかりの隅の方に座って、日食の時を待った。日食は意外とあっけなく始まった。それは時計でしか開始がわからないくらいで、肉眼ではそんなに違いがわからない。それでも30分も経てば明らかに太陽は欠けてきて、時々どこかで歓声が上がったりしていた。木漏れ日まで三日月状になっているのは、今まで意識して見た事がなかったので面白いなと思った。オレとリトは特に会話もなく、ただ黙って空を見上げているだけで、それからさらに30分が過ぎた。太陽はもう半分以上欠けていて、周りは薄暗い。日差しが徐々に和らいで、外気が少しひんやりとしてきたのがわかった。一瞬のダイヤモンドリングが輝いた後、真っ暗な空には白いコロナだけがまばゆく光を放っている。もうすぐ完全に太陽が隠れる。周りの誰もが息を飲む瞬間だった。「ねぇ、ポーランド」完全に月が隠れてからしばらくたった頃、突然リトに名前を呼ばれる。顔は動かさずに視線をやると、リトは神妙な面持ちで空を見上げている。「…どうしたん?」オレは再び視線を空に戻して言った。「一緒に……生きていこうね」「これからも」とか「ずっと」とかそんな余計な言葉は一切なかった。似たような言葉はオレだっていつもリトに言ってる。リトはオレにそう言われると少し困った顔をしてうつむいて、2秒ほど考え込んで、またそれから顔を上げて「そうだね」と笑いかけてくれる。だからリトがオレにどんな返事を求めているのかもわかる。「そんなん当たり前だし!」っていつものように強気に笑えばいいんよ。でもそれが今のオレにはとても難しかった。笑う事なんて慣れてる。誕生日に合わせてここまで連れて来てもらって日食なんて見て…今しかできない事を充分してもらってる。だから「ありがとう」の意味も込めて笑い返せばいい。――そう思ってはいた。真っ暗だった空は、さっきのダイヤモンドリングとは反対側に少しだけ光が漏れ始めていて、時々ざわついていた周囲は誰もいないかのように静かだ。黙っていると、さっきまでなかった日差しが戻ってくるのと共に、じんわりとこの地域特有の熱気が少しずつ体中を湿らせていくのを感じる。風は吹いているのに、ちっとも涼しくならない。しばらくしてまた太陽が完全に姿を現す頃にはもう空なんか見ていられない程暑いに違いない。汗で肌にはりついた髪をかき上げようとして、いつの間にか隣にいたリトの手がオレの手に重なっていた事に気づく。…いつもこんな風に当たり前のようにオレの傍にいてくれる。意識しなければ気づかないくらいリトはオレの心に自然に入り込んでいるのに。今更どうすればいいん…?あたり前の事があたり前にできない。そんな不自由すら気恥ずかしくて嬉しいと感じてしまう。そう思っていると、さっきオレが少しだけ動かした手をリトが握り締めてきた。そういえばまだ返事をしていない。もしかしたらその必要はないのかもしれないけど、やっぱりオレもリトに何らかの反応をしたいっていう気持ちはある。そんな戸惑いのせいで、なんかわからんけど泣けてきた。勝手に涙が目から溢れる。うまく言葉にできそうもないから、とりあえずオレは握り締められた手に同じように力を込めてみる。拭えない涙でいつの間にか空は滲んで、眩しくて何も見えない。先の事なんて誰にもわからんけど、今、この瞬間だけはリトをずっと好きでいたいと思った。翌日は昨日と同じ快晴。抜けるような青空と透き通る青い海。ほんの少しだけ湿った風が海から吹いてくる。日差しは相変わらず強くて日傘をさす人も多い。オレもリトも暑さに強いわけじゃないから、涼しそうな顔をして関係者に挨拶回りをしている日本のことを凄いなと思っていた。あと一時間もしないうちにオレたちはこの島を発つ。船で一日半揺られて、また飛行機を乗り継いで家に帰る。港はたくさんの人で溢れていて、人口密度でさらに熱気が増している気がした。帰りの船に乗り込んで、甲板からもうすぐ発つ小さな島を眺める。見送りの人はおそらくほとんど島民で、この先当分ないであろう大量の客に手を振っている。不意に名前を呼ばれた気がして目を凝らすと、一昨日遊んだ子供たちがオレに手を振っているのが見えた。オレも大声で返事をしながら手を振ると、隣にいたリトは変な顔をしていた。「来る時も思ったんやけど、ホントこのあたりは何もないんやね。360度、海しか見えんし。」船が出港してしばらくすると、数日滞在した島はあっという間に見えなくなった。「退屈?遊園地とか都会の大騒ぎできる場所に行きたかった?」「どうしてそう思うん?」「いや…わざわざ休みとって来るなら、もっと別のところで長い時間遊んでいたかったのかなと思って。」「…遊園地なんていつでも行けるしー。それに日食がなかったらこんな遠くまでくる機会なかったし、オレは満足しとるよ。移動時間が長くてもリトはずっとオレとおるやろ?だったらそれで充分やし。」いつものように苦笑しながら言うリトに、今更何言っとるの、と喉まで出かかった言葉を飲み込んでそう答えた。「…ホントに?」「オレの言う事信じられんの?」「そういうわけじゃないけど…」「じゃあ別にいいやん。」「うん、そうだけど……あ、ポーランド、これ」「え…」予想できる一通りのやり取りの後、リトはズボンのポケットから小さな包みを出した。丁寧にラッピングされたそれは、間違いなくオレへのプレゼント。「遅くなったけど、誕生日おめでとう」「何、昨日ので十分やのに…」差し出されたプレゼントを反射的に受け取る。「この旅行もプレゼントだけど、ちゃんと形に残るものもあった方がいいでしょ?」「でも…ここまでの旅費とか結構高かったやろ?」リトは笑っとるけど、オレもリトも裕福じゃないし、リトんちの経済状況だってそんなにいいわけじゃない。本当はこんな金なんてあるはずがない。「いいんだよ、お金の事なんて。…思い出を買うんだから。」「ん…ありがとーだし。」リトがそう言うのならオレはこれ以上はもう何も言わん。そう思ったとたん、昨日は全く言えなかったお礼の言葉が素直に出てくる。リトは照れくさそうにオレに微笑み返すと、「オレ何か飲み物でも買ってくるね」と言って船内へ消えた。リトを待ちながら海を眺める。太陽の光がきらきらと波に反射して、しぶきが時々甲板まで飛んでくる。空も海も信じられないくらいどこまでも青く広がっていて、不安なんて微塵も感じない。こんな景色の中にいられる事がどうしようもなく幸せで、オレはたまらず目を閉じてゆっくり深呼吸をする。吹き抜けていく海風が、世界の全てを包み込んでゆく気がした。 fin.***あんまり明るくならなかった話をここまで読んで下さってありがとうございます。たぶん矛盾点とか誤字脱字とか色々あると思うので、何かありましたらお知らせ下さい。そのうち修正してmainに入れときます。 [0回]PR